日別アーカイブ: 2026年8月3日

「肘が下がる」の原因は肘にない|投球肘を守るトレーニングの正しい順番|和歌山市和歌浦のパーソナルジム

公開日:2026年8月3日 | 監修:石川 翔(柔道整復師・鍼灸師/パーソナルトレーナー)

和歌山市和歌浦のTitanium Fitness Gymです。

併設の和歌の浦 翔鍼灸接骨院には、投球時の肘の痛みで来られる選手が少なくありません。施術で痛みが落ち着いたあと、選手や保護者の方から必ず出てくるのが「では、二度と痛くならないようにするには何をすればいいですか」という質問です。

答えは、肘を鍛えることではありません。順番を守って、体の土台からつくり直すことです。

正しく評価し、正しく積み重ねる。
この記事は、その「正しい順番」の話です。

先に大切なこと

今まさに痛みがある方は、トレーニングより先に医療機関で状態を確認してください。骨や軟骨に変化がある段階で鍛えると、悪化させることがあります。痛みの原因と、受診の順番については併設の接骨院ブログで詳しく解説しています。

痛みの原因を先に読む(接骨院ブログ)

この記事でわかること

  •  なぜ肘だけ鍛えても変わらないのか
  •  トレーニングの正しい順番(4ステップ)
  •  各ステップの具体的な種目とセルフチェック
  •  「肘が下がる」が変わっていく仕組み

1肘は「結果」であって「原因」ではない

投球は、地面から始まった力が股関節から体幹、肩甲骨を通って腕に伝わっていく動作です。この流れのどこかが止まると、足りない分を先にある関節が補います。列の最後尾にある肘は、そのしわ寄せを最も受ける場所です。

だから、肘のまわりだけを鍛えても、しわ寄せの構造そのものは変わりません。それどころか、崩れた動きのまま筋力だけを上げると、同じ場所により強い力がかかることさえあります。

変えるべきなのは、肘に負担を集めてしまっている「その手前」です。

2トレーニングには順番がある

当ジムが投球障害の選手に対して組む流れは、いつも同じ4段階です。

投球障害を防ぐトレーニングの4ステップ。下半身の柔軟性、体幹の安定、胸郭と肩甲骨の可動性、出力アップの順に進むことを示した図

図1|①動ける土台をつくる → ②その土台を保てるようにする → ③上半身を動かせるようにする → ④最後に力を出せるようにする。この順番には理由があります。

順番を飛ばすと何が起きるか

硬いまま鍛えると、体は「今動く範囲だけ」で強くなります。つまり、代償動作を筋力で固定してしまうということです。

よくあるのが、股関節が硬いまま腰を反ってごまかし、その姿勢のままベンチプレスを重ねて胸をさらに硬くしてしまうパターンです。数字の上では強くなっていますが、投げる体としては遠ざかっています。

3STEP1|下半身の柔軟性で、骨盤をニュートラルに

骨盤は、水の入ったバケツだと考えてください。前に倒れれば前から水がこぼれ、後ろに倒れれば後ろからこぼれます。こぼれない位置が、ニュートラルです。

骨盤の傾きを水の入ったバケツにたとえた図。前傾、ニュートラル、後傾の3つを比較

図2|骨盤が前に倒れれば反り腰、後ろに倒れれば猫背になります。そしてこの向きを決めているのは、骨盤に付いている下半身の筋肉です。

「胸を張れない」原因が、もも裏にあることは珍しくない

  •  ハムストリングス(もも裏)が硬い → 骨盤が後ろに引っぱられる → 背中が丸まる → 胸が張れない → 肩甲骨が動かない → 肘が下がる
  •  腸腰筋(股関節の前)が硬い → 骨盤が前に引っぱられる → 反り腰 → お腹の力が抜け、体幹が使えない

肩や肘の動きを変えたいのに、最初に触るのが下半身なのはこのためです。土台の向きが変われば、その上に乗っている背骨と肩甲骨の条件が変わります。

やること(各30〜60秒×2〜3セット)

  1. 1ハムストリングス
    仰向けで足裏にタオルをかけ、膝を伸ばしたまま脚を天井方向へ引き上げる。腰が浮かない範囲で。
  2. 2腸腰筋
    片膝立ちになり、お尻を締めたまま骨盤を後ろに回す。腰を反らずに、股関節の前が伸びる感覚を探す。
  3. 3殿筋
    椅子に座り、足首を反対の膝に乗せる。背すじを伸ばしたまま股関節から前傾する。
  4. 4足首
    壁の前に立ち、かかとを浮かせずに膝を壁へタッチ。左右10回ずつ。
  5. 5ヒップヒンジ
    棒を背中(後頭部・背中・お尻)に当て、腰ではなく股関節から折る練習を10回。

セルフチェック

 仰向けで、膝を伸ばしたまま脚が70度まで上がるか
 壁に背中とお尻をつけて立ったとき、腰と壁の隙間が手のひら1枚分におさまるか

4STEP2|そのニュートラルを「保てる」ようにする

柔らかくなっても、保てなければ投球中には使えません。次は、良い位置をキープしたまま手足を動かす練習に移ります。

  1. 1呼吸(360度)
    肋骨が横にも後ろにも広がるように鼻から吸い、口から細く長く吐く。10呼吸。
  2. 2デッドバグ
    仰向けで腰を床に軽く押しつけたまま、対角の手と脚をゆっくり伸ばす。左右各8回。
  3. 3ヒップリフト
    肋骨を締めたまま、お尻の力でお腹から膝までを一直線に。12回。
  4. 4サイドプランク
    20〜30秒×左右。腰が落ちない範囲で。
  5. 5バードドッグ
    四つ這いで対角の手脚を伸ばす。骨盤を水平に保つ。左右各8回。

ポイントは「固める」ではなく「保ったまま動かす」です。ここができてくると体幹がまっすぐになり、投球中に体が流れにくくなります。

セルフチェック

 デッドバグで手脚を伸ばしたとき、腰が床から浮かないか
 ヒップリフトで、もも裏がつりそうにならずお尻で上げられるか

5STEP3|胸郭と肩甲骨の可動性を取り戻す

土台が整ったら、いよいよ上半身です。ここが「肘が下がる」に直結します。

腕を上げる動作は、腕の骨だけで起きているわけではありません。腕が上がる角度のうち、およそ3分の1は肩甲骨が回ることで生まれています(肩甲上腕リズム)。そして肩甲骨が回るためには、その土台である胸郭が伸びている必要があります。

背中が丸いままだと肩甲骨が回れず肘が上がらないこと、胸椎が伸びると肘が上がることを比較した図

図3|背中が丸いままだと、肩甲骨は回れません。回れないのに腕を上げようとすると、上がりきらない位置で腕を振ることになります。これが「肘が下がる」の正体です。

やること

  1. 1胸椎伸展
    フォームローラーを肩甲骨の下に横向きに置き、頭を手で支えてゆっくり反る。位置を変えながら10回。
  2. 2オープンブック
    横向きで膝を曲げ、上側の手を大きく開いて胸を回す。左右各8回。
  3. 3キャット&カウ
    四つ這いで背中を丸める・反るを10往復。
  4. 4広背筋ストレッチ
    四つ這いからお尻を後ろに引き、脇の下を伸ばす。30秒×2。
  5. 5ウォールスライド
    壁に背中と腕をつけ、腕をゆっくり上下させる。10回。

いちばん多い代償

腰を反って「胸を張ったつもり」になることです。これでは胸椎は伸びておらず、腰に負担が移っただけになります。肋骨を締めたまま、胸だけを動かしてください。

セルフチェック

 壁に背中・お尻・後頭部をつけて立ち、腰を反らさずにバンザイして手の甲が壁につくか

6STEP4|最後に鍛える(前鋸筋・大胸筋・背筋)

ここまで来て、はじめて筋力トレーニングです。動く範囲が広がった状態で鍛えるから、その可動域ごと自分のものになります。

前鋸筋|肩甲骨を肋骨に安定させる

  1. 1肩甲骨プッシュアップ
    肘を伸ばしたまま、肩甲骨だけを寄せる・開く。10〜15回×2〜3セット。
  2. 2ベアクロール
    四つ這いで膝を床から少し浮かせ、対角で20歩前後に進む。
  3. 3ランドマインプレス
    斜め上方向に押す。肩甲骨が前に出る動きを覚えるのに向いています。8〜10回。

大胸筋|重量より、可動域

  1. 1プッシュアップ
    胸を深く下ろす。回数より、下ろせる深さを優先。
  2. 2ダンベルプレス
    バーベルより可動域が確保できます。下ろす深さを一定に。

背筋|引く側を多めに

  1. 1ロー系
    シーテッドロー、ワンハンドロー。肩甲骨を寄せて、しっかり戻す。
  2. 2ラットプルダウン
    肩がすくまない範囲で。
  3. 3フェイスプル・Yレイズ
    肩甲骨の後ろ側と、上方回旋の筋群に。

押す種目と引く種目の比率は、1:1から1:2。投球選手は引く側を多めにするのが基本です。前側ばかり鍛えると、せっかく取り戻した胸郭がまた丸まっていきます。

VBTで、その日の状態に合わせる

当ジムではEnodeを使い、バーやダンベルの挙上速度を測りながら負荷を決めています。同じ重量でも、疲労している日は速度が落ちます。数字で見えるので「今日は追い込まない」という判断ができ、投げ込み後のオーバーワークを避けられます。

感覚ではなく数値で管理できることは、シーズン中の選手にとって大きな武器になります。

7週の組み立て方

すべてを毎日やる必要はありません。土台づくりは短時間で毎日、筋力は週2回。これが続けやすく、結果も出やすい形です。

タイミング 内容 時間
毎日 STEP1のストレッチ+STEP2の呼吸・デッドバグ 5〜10分
週2回 A日 STEP1〜3 + 下半身(スクワット系・ヒンジ系) 45〜60分
週2回 B日 STEP1〜3 + 上半身(前鋸筋・押す・引く) 45〜60分
試合前日 STEP1〜3のみ(筋力トレーニングはしない) 15分

※投げ込みが多い時期は、筋力トレーニングの量を落とし、STEP1〜3の比重を上げます。負荷の調整はご相談ください。

8やりがちな失敗

  •  痛みがあるのに鍛える:まず状態の確認が先です。順番が逆になっています。
  •  可動域をつくらずに重量を追う:崩れた動きを強く固定してしまいます。
  •  ベンチプレスばかりやる:胸が硬くなり、猫背が進みます。引く種目とセットで。
  •  腹筋をクランチだけで済ませる:体を丸める方向ばかり鍛えると、胸郭がさらに閉じます。
  •  肩のインナーだけやる:土台が動かないままでは、肩甲骨の条件は変わりません。

9まとめ

  •  肘の痛みは、肘だけの問題ではありません
  •  下半身の柔軟性で骨盤をニュートラルに戻す(STEP1)
  •  その位置を保てる体幹をつくる(STEP2)
  •  胸郭と肩甲骨の可動性を取り戻す(STEP3)
  •  最後に、前鋸筋・大胸筋・背筋を鍛える(STEP4)

この順番で進めると、胸が張れるようになり、肩甲骨が本来の範囲で動けるようになります。結果として腕が上がり、肘が下がらなくなる。そして肘一点にかかっていたストレスが、全身に分散されていきます。

痛みを取ることと、痛くならない体をつくることは別の作業です。当ジムでは、その後半を担当します。比べない。競わない。積み重ねる。選手であっても、そこは同じです。

10よくあるご質問

Q. 中学生でもトレーニングして大丈夫ですか?

A. はい。成長期は、重い重量を扱うより自分の体重をコントロールする種目が中心になります。STEP1〜3はむしろこの時期にこそ取り組んでほしい内容です。骨や関節の状態を見ながら進めます。

Q. どのくらいで変わりますか?

A. 柔軟性の変化は数週間で感じる方が多いですが、動きとして定着するには数か月かかります。個人差が大きいため一律にはお答えできません。焦って重量を上げるより、チェック項目をクリアしながら進める方が結果的に近道です。

Q. 痛みがある時期は何をすればいいですか?

A. まず医療機関で状態を確認してください。そのうえで、肘に負担のかからない下半身や体幹のメニューは進められることが多いです。休養期間を「何もしない期間」にしないことが、復帰後の差になります。

Q. 自宅でもできますか?

A. STEP1とSTEP2は自宅で完結します。STEP3以降は、代償動作が出ていないかを見てもらった方が確実です。最初にフォームを覚えて、あとは自宅で継続するという進め方をおすすめしています。

Q. 野球以外の競技でも役に立ちますか?

A. はい。骨盤と胸郭の条件を整える流れは、ゴルフ、テニス、バレーボール、水泳など、腕を大きく使う競技すべてに共通します。当ジムではプロゴルファーやチームスポーツの選手のコンディショニングも担当しています。

関連記事|和歌の浦 翔鍼灸接骨院

【野球肘】肘が伸びきった時だけ痛いのは「肘筋」ではない?原因と治し方

接骨院ブログで続きを読む

投げる体づくり、和歌山でサポートします

Titanium Fitness Gymは、医療国家資格を持つトレーナーが常駐する、和歌山市和歌浦の24時間パーソナルジムです。プロゴルファー・濱田茉優選手や、ワンリーズ和歌山の選手のコンディショニングを手がけたトレーナーが担当します。併設の鍼灸接骨院と連携し、状態の確認からトレーニングまで同じ場所で完結します。

見学・体験トレーニングは無料で随時受付中です。はじめての方、運動が久しぶりの方も歓迎しています。

LINEで体験・相談する
電話する 080-1450-6588

店名
Titanium Fitness Gym(タイタニウムフィットネスジム)

所在地
〒641-0022 和歌山県和歌山市和歌浦南3-9-1 FSビル1F

電話
080-1450-6588

営業
24時間

体験
見学・体験トレーニング無料

併設
和歌の浦 翔鍼灸接骨院

監修:石川 翔(いしかわ しょう)
Titanium Fitness Gym 代表/和歌の浦 翔鍼灸接骨院 院長。柔道整復師・鍼灸師(国家資格)。パーソナルトレーナーとして、プロゴルファーをはじめとする競技者のコンディショニングとトレーニング指導を担当。施術とトレーニングの両面から、競技復帰とパフォーマンス向上をサポートしています。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断や治療を保証するものではありません。効果の感じ方や変化には個人差があります。痛みがある場合は、自己判断でのトレーニングを避け、医療機関にご相談ください。