-
最近の投稿
アーカイブ
カテゴリー
投稿日カレンダー

公開日:2026年8月21日 | 監修:石川 翔(柔道整復師・はり師・きゅう師/パーソナルトレーナー)
「筋肉痛は、我慢して残しておいた方が筋肉がつくんじゃないですか?」
和歌山市和歌浦のパーソナルジム Titanium Fitness Gym で、毎月のように受けるご質問です。そして、この質問にははっきりした答えがあります。
結論を先に言うと、痛みを長引かせること自体に、トレーニング上のメリットはありません。ただし「早く治す」という言葉を取り違えて、痛み止めや高用量のサプリメント、トレーニング直後のアイスバスで炎症を強引に抑え込むと、かえって筋肉の成長にブレーキがかかることが、複数の研究で報告されています。
つまり 「何で早く治すか」で答えが真逆になるのです。
この記事では、柔道整復師・はり師・きゅう師の国家資格を持つトレーナーの視点から、筋肉痛のメカニズムを解剖学・生理学レベルまで掘り下げつつ、今日から使える実践的なリカバリー法まで整理します。専門用語には必ずかみ砕いた説明を添えますので、トレーニング初心者の方も安心して読み進めてください。
【 この記事の結論 】
目次
目次
トレーニングの翌日から翌々日に出る筋肉痛は、医学的には 遅発性筋肉痛(DOMS:Delayed Onset Muscle Soreness) と呼ばれます。「遅発性」という名前のとおり、運動直後ではなく、時間が経ってから出てくるのが特徴です。
図1|筋肉痛は運動直後ではなく、時間が経ってからピークに達します。乳酸はその前に消えています。
かつては「疲労物質である乳酸が筋肉に溜まるから痛い」と説明されていました。今でもこの説明を目にしますが、スポーツ科学の世界ではすでに否定されています。理由は明確です。
筋肉は、サルコメア(筋節)という収縮の最小単位が数珠つなぎになってできています。全部が均一な強さではなく、長さも耐久性も少しずつ違います。
ここに、筋肉が引き伸ばされながら力を出す局面(エキセントリック収縮)——ダンベルをゆっくり下ろす、坂道を下る、着地するといった動き——が加わるとどうなるか。弱い筋節から順に、支えきれずに一気に引き伸ばされてしまいます。これが「ポッピング」と呼ばれる現象です。
かみ砕くと:強さの違うゴムを直列につないで引っ張ると、いちばん弱いゴムだけが極端に伸びて傷みます。筋肉の中でも同じことが起きている、というイメージです。
引き伸ばされた筋節では、細胞内へカルシウムが漏れ出し、タンパク質を分解する酵素が働き始めます。同時に、筋線維を支える骨格タンパク質(タイチン、デスミンなど)や、周囲を包む結合組織にも微細な損傷が生じます。
そこへ免疫細胞(好中球、続いてマクロファージ)が集まり、壊れた材料を片付けながら、同時に「ここを作り直せ」という再生シグナルを出します。この一連の流れが、筋肉痛の正体です。
ここが、多くの記事が書いていないマニアックな論点です。
図2|痛みを拾う自由神経終末は、筋線維の中ではなく、それを包む結合組織側に密に分布しています。
じつは、筋線維そのものには痛みを感じる神経終末があまり分布していません。痛みを拾う自由神経終末が密に存在するのは、筋膜、筋周膜、腱移行部といった結合組織のほうです。
動物実験では、エキセントリック運動のあとに NGF(神経成長因子) や GDNF(グリア細胞株由来神経栄養因子) といった物質が筋内で増加し、これが感覚神経を過敏化させて「押すと痛い・動かすと痛い」状態(機械痛覚過敏)を作ることが示されています。逆に言えば、じっとしていれば痛くないのはこのためです。
かみ砕くと:神経そのものが増えて敏感になっている状態です。傷が痛いのではなく、センサーの感度が一時的に上がっている、と考えると近くなります。
この理解が、なぜ実務で重要なのか
「筋線維が壊れているから痛い」と考えると、痛みの強さ=損傷の大きさだと錯覚します。ですが実際には、センサーの感度が上がっているだけかもしれません。
だから、痛みの強さで筋肥大の大きさを測ることはできないのです。
現場でもっとも根強い誤解が、これです。
筋肉痛は、次の3つの条件がそろうと強く出ます。
いずれも「新しい刺激だった」という意味であって、筋肥大に最適な刺激が入ったという意味ではありません。
◎ ここは、はっきりしています
同じ人の左右の脚を使って、筋肉痛の強さと筋肥大の大きさを比べた研究では、両者に明確な相関は見られませんでした。
さらに、トレーニングを続けていくと筋肉痛は出にくくなります(反復回数効果)。ですが、そのあいだも筋肉は増え続けます。痛みが消えても、効果は消えていません。
かみ砕くと:筋肉痛は「新しさ」のサインであって、「効いた量」のサインではありません。
ようやく本題です。
答えは「何で治すかによる」。ここを分けずに語るから、話がかみ合わなくなります。
前半でお伝えしたとおり、筋肉痛の裏側では免疫細胞が集まり、壊れた材料を片付けながら再生シグナルを出しています。
つまり炎症は、修復と成長のスタートボタンです。ここを外から強く抑え込むと、ボタンごと押せなくなります。
図3|いずれも「痛みを消す」ことには成功します。ですが、消しているのは痛みだけではありません。
もっとも影響が大きいのがこれです。次の章で詳しく扱います。
炎症を抑える薬は、痛みを確実に軽くします。ですがその作用点は、まさに修復シグナルを出している経路です。高用量を長期間使うと、筋肥大の反応が鈍くなるという報告があります。
痛みが強くて日常生活に支障がある場合に、医師の指示のもとで使うことを否定するものではありません。問題は「筋肉痛を消すために毎回飲む」という使い方です。
ビタミンCやEを大量に摂ると、運動で発生する活性酸素を減らせます。ですがその活性酸素も、体が「適応せよ」と判断するためのシグナルとして使われています。
食事から摂る範囲であれば問題ありません。サプリメントで極端な量を狙うと、話が変わってきます。
ここは、具体的な数字があります。
図4|同じトレーニングをしても、直後の過ごし方でこれだけ差がつきました。
◎ 12週間、実際に比べた研究があります
21名の男性を、週2回・12週間のトレーニングに参加させ、毎回のトレーニング後に10分間の冷水浴(約10℃)を行う群と、軽い運動で回復する群に分けた研究です(Roberts ら, 2015年・The Journal of Physiology)。
MRIで測定した太ももの筋肉量の増加は、軽い運動で回復した群が約15%、冷水浴群は約2%。筋力の伸びも、冷水浴群のほうが小さくなりました。
細胞レベルでも、サテライト細胞(筋肉を作り直す幹細胞)の活性と、p70S6キナーゼ(たんぱく質合成のスイッチ)のリン酸化が、冷水浴群で明確に低下していました。
論文の結論はこうです。「日常的な回復法としての冷水浴の使用は、再考されるべきである」
8件の研究をまとめた分析(2024年)でも、同じ方向の結果が出ています。冷水浴を組み合わせると、筋肥大の効果が小さくなる傾向が確認されました。
ただし、正確にお伝えします
① 筋力については、影響が出なかったという報告もあります。冷水浴で鈍るのは、主に筋肉のサイズの変化です。
② 試合と試合の間など、「次のパフォーマンスを優先する場面」では話が別です。翌日にもう一度戦う必要があるなら、冷水浴は有効な選択肢になります。
目的が「筋肉を大きくすること」なら避ける。目的が「明日の試合」なら使う。使い分けが答えです。
かみ砕くと:冷水浴が「悪い」のではありません。筋肥大というブレーキをかけてでも、疲労を早く抜きたい場面があるだけです。
では、何をすればいいのか。
炎症を止めずに、修復を助ける。これが原則です。
図5|派手な方法はありません。ですが、効果はここに集まっています。
痛いからといって完全に安静にすると、かえって長引きます。
ウォーキング、エアロバイク、ストレッチ、入浴。いずれも血流を増やすことが目的です。修復の材料である酸素とアミノ酸を運び、老廃物を片付けるには血流が要ります。
目安は「痛みが強くならない範囲」。動かして楽になるなら正解、動かして痛みが増すなら量が多すぎます。
材料がなければ、作り直すことはできません。体重1kgあたり1.6g前後を目安に、1日3〜4回に分けて摂ってください。
とくに、寝る前と朝起きた直後は空白ができやすい時間帯です。
修復のほとんどは、寝ている間に進みます。成長ホルモンの分泌も、眠り始めの深い睡眠に集中しています。
「回復のために何かする」よりも、「睡眠時間を確保する」ほうが確実です。
ここがいちばん見落とされます。
強烈な筋肉痛は、避けられる副産物です。久しぶりの種目をいきなり全力でやる、量を一気に増やす、慣れない動きを大量に繰り返す。こうした組み方をしなければ、そもそも出ません。
そして痛みが出ないほうが、次のトレーニングの質が上がります。結果的に、そのほうが伸びます。
当ジムは、医療国家資格保有トレーナーが常駐する、スポーツ科学に基づいたパーソナルジムです。
筋肉痛を出すことが目的のトレーニングは行いません。
とくに、運動がはじめての方や、久しぶりに再開される方は、最初の数回で強い筋肉痛が出ると続かなくなります。そこを避けるのが、私たちの仕事です。
最後に、安全に関わる話です。
次のような場合は、単なる筋肉痛ではない可能性があります。
こんなときは、運動を中止して医療機関へ
とくに5つ目は、極端に追い込んだあとにまれに起こります。頻度は高くありませんが、放置すると腎臓に負担がかかります。
判断に迷う場合は、併設の和歌の浦 翔鍼灸接骨院でご相談いただけます。
Q. 筋肉痛があるとき、トレーニングしてもいいですか?
A. 同じ部位を強く追い込むのは避けてください。フォームが崩れやすく、けがのリスクが上がります。別の部位のトレーニングや、軽い有酸素運動であれば問題ありません。むしろ血流が増えて回復が進みます。
Q. 筋肉痛が出ないと、効いていないのでは?
A. いいえ。筋肉痛の強さと筋肥大の大きさには、明確な相関がありません。トレーニングを続けると筋肉痛は出にくくなりますが、そのあいだも筋肉は増え続けます。
Q. アイスバスやサウナは全部だめですか?
A. 全部だめではありません。トレーニング直後に毎回行うのは、筋肥大を狙う目的では避けたほうがよいという研究結果があります。一方、翌日に試合があるなど「次のパフォーマンスを優先する場面」では有効です。目的で使い分けてください。
Q. プロテインは筋肉痛に効きますか?
A. 痛みそのものを直接抑えるわけではありませんが、修復の材料になります。たんぱく質が足りていないと、作り直す作業自体が進みません。
Q. ストレッチで筋肉痛は防げますか?
A. 運動前の静的ストレッチで筋肉痛が予防できるという十分な根拠はありません。ただし、運動後の軽いストレッチは血流を増やす目的で有効です。
Q. お風呂で温めるのはどうですか?
A. 血流を増やす方向に働くので、回復にはプラスです。ただし、痛めた直後で腫れや熱感が強い場合は避けてください。
Q. マッサージは効果がありますか?
A. 痛みの感じ方を和らげる効果は報告されています。強く揉みほぐすより、やさしくさする程度のほうが安全です。
筋肉痛を我慢して残す必要はありません。ですが、消しにいく方法を間違えると、せっかくのトレーニングが目減りします。
痛みと上手に付き合いながら、確実に積み上げていきましょう。
この記事を書いた人|石川 翔(いしかわ しょう)
Titanium Fitness Gym 代表/和歌の浦 翔鍼灸接骨院 院長。柔道整復師・はり師・きゅう師(いずれも国家資格)。3年制の養成校を2つ修了し、いずれも首席。プロゴルファーをはじめとする競技者のコンディショニングも担当しています。
医療国家資格保有トレーナーが常駐する、スポーツ科学に基づいたパーソナルジムです。
和歌山市(和歌浦・新和歌浦・雑賀崎・紀三井寺・宮前・秋葉町・和歌山市駅周辺など)を中心に、海南市・岩出市・紀の川市・有田市方面からもご来店いただいています。
まずは無料体験から
痛みを我慢させるトレーニングは行いません。
体の状態を確認したうえで、今のあなたに合った負荷をご提案します。
店名
Titanium Fitness Gym(タイタニウムフィットネスジム)
所在地
〒641-0022 和歌山県和歌山市和歌浦南3-9-1 FSビル1F
電話
080-1450-6588
施設利用
24時間(パーソナルトレーニングは予約制)
体験
見学・体験トレーニング無料
併設
和歌の浦 翔鍼灸接骨院/駐車場完備
当ジムについて詳しく知りたい方はこちら
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療を目的とするものではありません。効果や感じ方には個人差があります。強い痛みや不調がある場合は、医療機関にご相談ください。